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ブロー成形金型設計者に必要なスキルとは? 製品の『断面』をイメージすることの重要性を知る

製品形状のサンプルCAD図

お世話になります、株式会社関東製作所 プラスチック製品開発チーム 部長の丸山です。
今回はブロー成形金型設計者にとって『どんなスキルが必要なのか?』を私なりの視点でご紹介させていただきます。

ブロー製品設計者に必要なスキルとは?

まずCAD作業をするにあたり、どのようなスキルが必要でしょうか?

パソコンの知識CAD操作スキル図面読解力
仕様書を解釈できるスキルはもちろんですが、頭の中で形状をイメージできることが一番重要ではないでしょうか。

CADをつかえば3D形状はその場で作成できます。しかし、どのコマンドを使い、どのような手順で行えば最も効率的に目的の形状を作成することができるのか?そういったことを考えられるスキルも重要です。

ブロー金型の設計で重要になるのは、何回かお話したようにブロー比です。製品形状が、幅と深さの関係が1:1を上限とし、それより深さが深い形状は成形不良を起こす確率が高くなります。

【ブロー成形の不具合に関する参考記事】
> ブロー成形の成形不良『薄肉』を未然に防止 金型におけるPL(パーティングライン)設定のポイントとは?

> ブロー成形金型による成形不良『薄肉』を検証 金型の『PL位置』が成形品に及ぼす影響とは

 

設計者にとって最も重要な素養:製品断面のイメージ力

製品の設計において、この『製品形状を観察する能力』がかなり重要になってきます。
このスキルを身に付けるにはどうすればいいのか?それにはCAD上でデータを見るだけでなく、頭の中で製品データをイメージし、頭の中で断面をとるトレーニングをすることです。

 

楕円形状の3Dサンプルから、断面をイメージしてみる

下記のような流線形の形状の断面はどんな形をしているでしょうか。

楕円形状の3Dサンプル

下図のような楕円をしています。

楕円形状の3Dサンプル

 

それでは長手方向の断面はどうでしょうか。

楕円形状の3Dサンプル

長手の断面はもっと細長い楕円です。
2つの断面を合わせて製品データ上で再現すると下図になります。

楕円形状の3Dサンプル

上図のように、頭の中で2つの断面がイメージできましたでしょうか。

 

複雑形状の3Dサンプルから、断面をイメージしてみる

それ以外の場所の断面はどうでしょうか。今度はもう少し複雑な形状で試してみましょう。

複雑形状の3Dサンプル

上図の形状の断面を見てみましょう。

複雑形状の3Dサンプル

断面A Aは

複雑形状の3Dサンプル

 

断面B-Bは

複雑形状の3Dサンプル

 

断面C-Cは

複雑形状の3Dサンプル

 

3つの断面を合わせると

複雑形状の3Dサンプル

いかがでしょうか。イメージされた断面になっていましたか?

実際は赤い断面線は製品にはありませんが、頭の中でこの赤い線が描けることが設計者にとっては最も重要な素養だと考えております。
そのためには日頃から目にするものを、同じように断面をイメージすることが大切です。

 

先ほどの、流線形状の短手の断面の数を増やしていくと、断面のラインだけで形状表現が可能になります。

断面のラインだけで形状表現

このように形状認識は断面を集積しても可能です。
製品の断面がどのような形状になっているか?そして断面の一つ一つを集積していくことが、頭の中で3D立体イメージを完結させる助けになるのです。

発展編:人物の顔の形状で断面をとってみる

それでは、今度は人物の顔の形状ではどうでしょうか。

人物の顔の形状

上図は頭部の形状で下図は断面線です。

人物の顔の形状の縦断面線

 

横方向の断面はどうでしょうか。

人物の顔の形状の横断面線

 

わかりにくいので断面線を面で表現してみましょう。

人物の顔の形状の断面線を面に

 

合成すると

3D形状のイメージに近い状態

かなり3D形状のイメージに近づいてきましたね。

 

まとめ

ブロー金型の設計において極力『成形不良』を起こさないようにするには、製品形状は当然ではありますが、パーティングライン(PL)がとても重要です。パーティングラインは各断面の一番外側のポイントを結んでできるラインです。従って断面の認識がないとパーティングラインのイメージはできません。

断面形状の認識からパーティングラインのイメージを作ることは、ブロー金型の設計においては忘れてはならない基本なのです。
顧客から製品データ、抜き方向、パーティングラインが出図されても、一度、形状の断面がどのようになっているのか確認して作業を進めていきたいものです。

株式会社関東製作所には、熟練のブロー金型設計者が多数在籍しています。ブロー製品開発の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

 

> 株式会社関東製作所ホームページ

 

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