射出成形における投影面積とは?

射出成形で製品を開発する際、射出成形機サイズを決定する重要な要素として「投影面積」があります。これが分からないと、何トンの成形機を保有しているメーカーに製造委託すればいいのか分かりません。今回は投影面積の求め方や注意点を解説致します。

なぜ射出成形で投影面積の計算が必要なのか?

射出成形で投影面積の計算が必要な理由は、「どのぐらいの型締め力が必要か」を計算するためです。射出成形の基本知識のおさらいですが、

  1. 樹脂を溶融する
  2. 溶融樹脂を金型に注入する
  3. 金型で溶融樹脂を冷却し樹脂を硬化させる
  4. 成形品を金型から取り出す

大きく分けると上記のようなサイクルで成形を行っています。今回のキーポイントは「2.溶融樹脂を金型に注入する」の部分です。

射出成形では溶融樹脂を高い圧力をかけて金型に注入します。この「高い圧力」は、「圧力のかかる面の大きさ」=「投影面積」がなければ計算ができないからです。(射出圧力の計算には、投影面積の他に使用する樹脂材料の種類やゲートタイプ、ランナー仕様などの情報も必要です)

よって、射出成形品の開発では投影面積の計算は必要不可欠であり、これによって射出成形機のサイズを選定をすることができます。

射出成形における投影面積とは?

射出成形における投影面積とは、「金型の可動方向に直角な面に投影した時の成形品の面積」を指します。言葉では理解しづらいので下記の図解をご参照ください。

投影面積

なぜ、投影面積を求めるのか?それは、「投影面=圧力のかかる面」だからです。射出成形では100Mpaもの圧力をかけて溶融樹脂を射出して金型内で冷却しながら押し固めます。よって、投影面積が分かることでどれだけの「型締め力が必要」なのか分かります。

型締め力とは
射出成形機のサイズは「型締め力」の数値で表されます。この数値は、成形機が金型を締め付ける力を示し、成形時に溶融樹脂の圧力に負けず、適切な製品を作るために重要な指標です。

成形品のどの面が投影面になるのか?

理屈は分かっても知見のない方からすれば、投影面がどの面なのか分からないと思います。形状や条件などによって例外はありますが、射出成形の基本を押さえれば比較的簡単に投影面を予測することが可能です。

【射出成形で押さえておきたいポイント】

  1. 金型は固定側と可動側で構成されている
  2. 成形品は可動側に貼り付いて型開きする
  3. 溶融樹脂は冷却すると収縮する

投影面_金型

射出成形では熱収縮を利用して金型の可動側に成形品を貼り付かせた状態で型開きをします。

これが分かるとPL(パーティングライン)がどのあたりに設定されるかも同時に理解することができます。

PL(パーティングライン)について詳しく学ぶ

投影面積の計算で注意が必要なケース

外寸だけで計算をしない

注意が必要なのは、あくまで面積ということです。例えば、額縁をイメージしてもらうと外寸は大きいですが、真ん中は大きな穴があるので、面積としては小さくなります。

投影面積_額縁

上図のような額縁の場合、34.7×26㎝-29.7×21㎝=278.5㎝²

額縁は分かり易いですが、例えば、投影面にたくさん穴形状のある製品や、電子機器の筐体で投影面にモニターをはめ込む為の大きな開口があるなど、それらを見落とし外寸だけで計算すると面積が大きくなってしまいます。

金型でセット取り(複数個取り)にする場合

射出成形で量産数の多い製品などでは、1つの金型でセット取りにする場合があります。例えば、上記の額縁を2個取りの金型で成形するには、投影面積を2倍にする必要があります。

(34.7×26㎝-29.7×21㎝)×2個=557㎝²

セット取りにするかしないかは、単純に量産数だけ決定せず、成形メーカーや金型メーカーとよく相談をして決定しましょう。製品のサイズや形状によってはセット取りにできないケースもあります。

ここまで分かれば射出成形機サイズの選定にはもう一歩です。

まとめ

射出成形において投影面積の計算は不可欠であり、これは「どれだけの型締め力が必要か」を判断するために必要です。投影面積とは、「金型の可動方向に直角な面に投影した際の成形品の面積」を指し、この面積にキャビティ内圧力を掛け合わせることで、必要な型締め力を算出し、適切な成形機サイズを選定できます。

【投影面積の重要性】

・圧力のかかる面積を算出するため

射出成形では溶融樹脂を高い圧力で金型に注入し、冷却・硬化させます。圧力を適切に計算するには、「圧力のかかる面積(投影面積)」が必要となります。

・PL(パーティングライン)の決定にも関わる

投影面積が分かると、どの部分がPLになるかの判断も容易になります。

 

【投影面積の計算時に注意すべきポイント】

・外寸だけで判断しない

例)額縁のように中央に大きな開口がある場合、外寸だけで計算すると実際の面積より大きくなってしまう。

・セット取り(複数個取り)の場合、面積を加味する

1つの金型で複数個取りする際は、投影面積をその個数分考慮する必要がある。

 

投影面積の理解が深まれば、射出成形機サイズの正確な選定へとつながります。