プラスチック部品の接合方法|製品開発で失敗しない選定ポイントを解説

プラスチック製品の開発において、複数の部品を組み合わせるために「接合」が必要になるケースが多くあります。しかし、「部品同士をつなげられればよい」という考えで接合方法を安易に決めてしまうと、強度不足や組立作業のしにくさなど、後工程で問題が発生する可能性があります。そのため、開発段階から製品の用途や要求性能、生産数量などを踏まえ、適切な接合方法を選定することが重要です。

 

本記事では、プラスチック接合方法の種類や特徴、最適な方法の選定ポイントについて詳しく解説します。

プラスチック部品の接合とは

プラスチック部品の接合は、2つ以上の部品同士を組み付ける・つなぎ合わせる作業を指します。ねじなどの部品を使う方法から、有機溶剤、熱で溶かして一体化させる方法など、様々な方法があります。

 

私たちの身の回りにある製品も、複数のプラスチック部品を組み合わせて作られているものが多くあります。
たとえば、以下のような場面で接合が必要になります。

 

・容器の本体と蓋のように、2つ以上のパーツで構成される場合
・電子機器のケースなど、中に部品や基板を収める構造の場合
・中空構造やアンダーカットが、一体成形できない製品を分割した形状で成形し、後から接合(一体化)する場合
大型製品を分割して成形し、後から組み合わせる場合

 

プラスチック製品の多くは射出成形をはじめとする、金型を使用した工法で量産されます。金型の構造上の形状や板厚などの制約があるため、このようなプラスチックの「接合」は多くの製品で必要になります。

 

 

プラスチック接合の種類①機械的接合

機械的接合とは、ねじやスナップフィットなど、部品の形状や締結部材を使って接合する方法です。ほどんどの機械的接合方法は分解や再組立てがしやすいという特徴があります。代表的な機械的接合には、以下の4種類があります。

 

ねじ・ボルト締結

ねじやボルトを使って部品同士を締め付ける方法です。材質・形状を問わず、ほぼどんなプラスチック製品にも適用できる汎用性の高さが特徴です。

 

ねじ・ボルト締結は、電池交換が必要なリモコンや、修理や点検を前提とした電子機器など、中身の部品を取り出す場面が想定される製品でよく使われる方法です。分解・再組立てのしやすさを優先したい場合に適しています。

 

金型の開き方向にねじ締めをするような機構であれば、他の接合方法と比較して金型費用が安価になります。しかし、繰り返し取り外し(ねじ締め)を行うような製品では、ナットなどをプラスチック製品にインサートする場合があり、その場合は金型や成形単価のコストアップの要因になります。

 

ねじ締めの作業は、少量であれば工具のみで対応できますが、当然、締め付け作業に人手や工数がかかります。また、大量生産やねじ締めの点数が多くなる場合は、ねじ締め機などの専用設備を導入するケースもあり、その際は設備コストが発生します。いずれの場合も、ねじやボルトという部品費用がかかります。

Plus One Point !
近年のリサイクルという観点では、製品を廃棄する際に、金属とプラスチックで分ける必要もあるため、「ねじ・ボルト締結」は代表的な接合方法である半面、大量生産を行う製品では見直しもされつつあります。

 

スナップフィット

スナップフィットとは、プラスチック自体の弾性を利用し、爪状の形状を相手部品にはめ込んで固定する方法です。ねじなどの締結部材を使わないため、部品コストはかかりません。組立ても押し込むだけのシンプルな作業のため、作業コストを抑えやすいのが特徴です。

 

一方で、爪形状や爪を受け止める側の形状がアンダーカットになる場合が多く、金型にスライドといった機構が必要になります。そのため、ねじ締結に比べて金型コストは高くなりやすい傾向があります。
また、爪部分は繰り返しの着脱によって劣化・破損しやすいです。そのため、想定される取り外しの頻度や求める耐久性に応じて、爪の形状(角度・厚み)や材質を検討する必要があります。

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簡易金型を使用し、スナップフィットの嵌合性や耐久性を検証することも可能です。

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インロー

インローは凹凸の形状をはめ合わせる構造です。単体での固定力はあまり無いため、他の接合方法と組み合わせて使われることが多いです。
部品コストはかからず、組立作業も簡単なので作業コストも削減できます。また、アンダーカットにならない場合が多いので、金型コストも抑えられます。

 

インローの目的は「固定」ではなく「位置決め」にあります。溶着であれば接合面のズレを防いで溶着不良を防止し、ねじ締結であればねじ穴の位置合わせを容易にするなど、後工程の作業性に貢献する構造です。

一方で、PP・PEのような柔軟性の高い材質では、タッパーのふたのように単体である程度固定できるケースもあります。ただし、ABSやアクリルのような硬い材質では、弾性せずに割れる可能性が高いです。このように、材質の弾性に目的が左右される点がポイントです。

 

ねじ込み

プラスチック製品自体にねじ山を成形して締結する方法です。ボトルのキャップなど、繰り返し開け閉めする製品でよく使われています。

 

部品コストはかからず、締結作業も比較的簡単に行えます。一方で、プラスチック製品にねじ山を成形するには、金型にスクリュー機構を組み込む必要があります。特に内ネジの場合は、金型構造が複雑になり、その分金型コストは上がりやすくなります。

Plus One Point !
小ロット品などの際には、キャップ部品(内ねじ)に関しては、既製品を購入して使用する方が、安価なケースが多いです。

 

 

プラスチック接合の種類②溶着

溶着とは、プラスチックに熱を加えて接合面を溶かし、部品同士を一体化させる方法です。
溶着には複数の種類があり、方法によっては高い接合強度や気密性を確保できます。また、ねじやボルトなどの他の部品が必要ないことも特徴です。

 

一方で、溶着には基本的に専用の設備や治具が必要となるため、導入時には初期費用がかかります。ただし、溶着作業は機械によって自動化できるため、生産数量が多いほど1個当たりのコストを抑えやすくなります。

 

なお、一度溶着した部品は、基本的に取り外したり、再度組み立てたりすることができません。そのため、分解を前提とする製品には不向きです。
溶着は、接合強度や気密性を重視する製品、量産によって設備投資を回収しやすい製品に適した接合方法です。

Plus One Point !
ねじや金属、有機溶剤などを使用せず接合する方法のため、リサイクルの観点では注目されている接合方法です。ただし、上記に記載のある通り、専用設備や溶着に関する知見も必要なため、採用難易度が高い接合方法でもあります。

 

熱板溶着

熱板溶着の説明図

熱したプレート(熱板)を接合面に押し当てて溶かし、圧着して固める方法です。接合面全体が分子レベルで溶け合うため、一体成形品に匹敵する高い気密性と強度が得られます。自動車のウォッシャータンクやリザーブタンクなどで使われています。

> 金型製作から専用の熱溶着機製作まで一貫対応 – 自動車用ウォッシャータンク –

 

一方、プレートを加熱してから接合面を溶かし、冷やして固めるまでに一定の時間がかかるため、他の溶着方式に比べるとサイクルタイムは長くなりやすいです。

 

超音波溶着

超音波溶着の説明イラスト

超音波振動による摩擦熱を利用して、接合面を溶かして一体化させる方法です。工具(ホーン)をワークに押し当てて発振するだけで、数秒程度で溶着が完了します。

実際の超音波溶着の様子は下記からご覧いただけます。

 

振動溶着

部品同士の接合面をこすり合わせ、摩擦熱で樹脂を溶かして一体化させる方法です。面全体で一体化した接合ができるため、高い強度・気密性が得られます。

熱板溶着・超音波溶着・振動溶着の詳しい説明や、その他の溶着方法については、下記コンテンツからご覧いただけます。

> プラスチックの接合方法『溶着』を学ぶ

 

 

プラスチック接合の種類③接着・溶剤接合

接着・溶剤接合は、いずれも熱を使わずにプラスチック部品を接合する方法です。接着剤や両面テープを使う「接着」と、溶剤で接合面をわずかに溶かして圧着する「溶剤接合」があります。

 

接着

接着剤や両面テープを使う方法で、部品への熱ダメージが少なく、異なる材質同士を接合しやすいという特徴があります。

 

接着において重要なのは、樹脂材質との相性です。例えば、PPのように、接着剤や粘着剤がなじみにくい材質もあり、こうした場合は事前にプライマー処理や表面処理を行うなど、追加の工程が必要になります。
また、プラスチック製品の形状や材質によっては、高い強度や気密性が確保できない場合もあります。そのため、試作用途として切削加工と合わせて使われるなど、少量生産の際に採用されることも多い方法です。

 

溶剤接合

溶剤接合とは、溶剤で接合面をわずかに溶かし、圧着することで一体化させる方法です。アクリルや塩ビなど、溶剤に溶けやすい材質でよく使われます。
溶剤が浸透して接合面同士が分子レベルで結びつくため、接着剤を使うよりも透明度の高い仕上がりが得られやすく、強度も確保しやすい点が特徴です。実際に、水族館の厚みのある水槽にも、アクリルの溶剤接合が使われています。

 

一方で、材質によっては溶剤に溶けにくく、この方法自体が使えない場合もあるため、事前の確認が欠かせません。また、溶剤には人体や環境への配慮が必要なものも多く、換気など作業環境の整備が求められる点にも注意が必要です。

 

 

プラスチック接合方法の選び方

プラスチック部品の接合方法を選定する際は、製品に求められる性能や生産数などを総合的に検討することが重要です。ここでは、「分解性」「強度」「気密性」「リサイクル性」「コスト」の5つの観点から、それぞれどのような接合方法が適しているのかを解説します。

 

分解性

取り外しや部品交換を前提とする製品には、機械的接合が適しています。特にねじ・ボルト締結は繰り返し取り外しがしやすい方法です。スナップフィットも取り外しが可能な構造ですが、形状によっては一度はめ込むと取り外せない(取り外す際に爪が割れる)場合もあります。そのため、樹脂材質や爪の形状、取り外し頻度に応じて設計する必要があります。

 

強度

強度が必要な製品には、ねじ・ボルト締結や溶着溶剤による接合が向いています。特に、溶着や溶剤接合は、点や線ではなく面全体を接合面にすることで、力が一点に集中せず分散されやすく、高い強度を確保できます。

 

気密性

防水・防塵性能が求められる製品など、気密性が必要な製品には溶着や溶剤接合が適しています。接合面の樹脂が分子レベルで結合するため、高い気密性を確保しやすいです。

また、ねじ・ボルト締結の場合は、締結だけで十分な気密性を確保することが難しいため、パッキン(Oリング)などのシール部品を併用することで、気密性を補う方法もあります。

 

リサイクル性

近年は、廃棄時の分解・リサイクルのしやすさも、接合方法を選ぶ重要な要素となっています。
スナップフィットは、締結部材を使わず単一の樹脂素材で構成されるため、リサイクル性に優れています。ねじ・ボルト締結も、金属部品さえ外せば材質ごとに分別すること自体は可能ですが、1本ずつ取り外す手間がかかるため、数量が多いと作業効率の面では負担になりやすく、リサイクル性が高いとは言い切れない面もあります。

 

また、同じ材質同士であれば、溶着や溶剤接合は接合部にも異物が残らず、リサイクルしやすい方法になります。一方、接着剤や両面テープを使用すると、樹脂とは異なる物質が接合部に残ります。分離が難しい場合は、リサイクル材の品質に影響する可能性があるため、注意が必要です。

 

コスト

接合によるコストは「部品コスト」「作業コスト」「設備コスト」「金型コスト」のうち、どの費用を重視するかによって、最適な方法が変わります。

 

・部品コストを抑えたい場合:スナップフィットや溶着(締結部材が不要)
・作業コストを抑えたい場合:専用設備による溶着やねじ締め
・設備コストを抑えたい場合:機械的接合、接着・溶剤接合
・金型コストを抑えたい場合:ねじ・ボルト締結やインロー

 

ただし、接合にかかるコストは生産数量や作業内容によっても変わります。少量生産や、製品ごとに細かな調整が必要な場合は、ねじ締めや接着を人手で対応する方が設備を導入するよりも安くなることがあります。逆に、生産数が多い場合や、精密かつ均一な接合作業が求められる製品は、専用設備を導入した方が作業時間や品質のばらつきを抑えられ、製品1個当たりのコストを削減しやすくなります。

接合方法を選定する際は、初期費用だけでなく、部品コスト、作業時間、不良率などを含めたトータルコストで比較することが重要です。

ねじ・ボルト スナップフィット 溶着 接着 溶剤
分解性
強度
気密性 〇(パッキンと併用)
リサイクル性
コスト
(少量生産)

※上記評価はあくまで一般的な目安です。製品形状や材質・生産数などによって異なります。

 

このように、接合方法によって金型コストの構造は大きく異なります。
金型コストが上がりやすい方法を採用する場合は、簡易金型で接合部の設計を事前に検証しておくことで、量産後の手戻りコストを抑えられます。

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一体成形による接合方法『2色成形・インサート成形』

これまで紹介した、「機械的接合」「溶着」「接着・溶剤接合」の方法は、いずれも別々に成形した部品を、後工程でつなぎ合わせる接合方法でした。他の方法として、成形工程の中で複数の部品を一体化して成形する方法もあります。その方法として「2色成形」「インサート成形」について解説します。

下記の方法では、金型数が増えることでイニシャルコストが増えますが、後工程での工数や部品費が不要になるため、大量生産に向いた接合方法です。
金型内で接合する方法のため、金型特有の制約が発生するため、すべての製品でこの接合方法が採用できる訳ではなく、その点を踏まえて設計段階からの考慮が必要です。

 

2色成形

2色成形とは、異なる2種類の樹脂や色を順番に成形し、後工程なしで一体で成形する方法です。硬質樹脂と軟質樹脂を組み合わせることで、グリップ部分に滑り止め機能を持たせたり、パッキン部分を一体成形して気密性を高めたりできます。

 

2色成形には「インサート2色成形」と「回転2色成形」があります。それぞれの特徴については、下記コンテンツで詳しく解説しています。

> 射出成形における2色成形とは?種類や成形の流れ、特徴について解説

 

インサート成形

インサート成形の流れ①②

インサート成形とは、金属部品や別の樹脂部品などをあらかじめ金型内に配置し、その周囲に樹脂を射出して一体化させる方法です。成形工程の中で部品を一体化できるため、成形後の組立作業を削減できます。

 

インサート成形の流れやアウトサート成形については、下記コンテンツで詳しく解説しています。

> インサート成形を詳しく解説|射出成形によるインサートの流れとメリット・デメリットを紹介

 

まとめ

プラスチック製品の接合方法には、主に機械的接合、溶着、接着・溶剤接合の3つがあり、それぞれ特徴が異なります。そのため、製品に求める性能や目的・形状・材質・数量を総合的に考慮したうえで選ぶ必要があります。製品設計を行う際には、これらを明確にしたうえで設計を進めるか、判断に迷う場合は専門の設計会社に相談することをおすすめします。

㈱関東製作所では数ある接合方法のなかから、材質や形状、生産数量に応じた接合方法をご提案いたします。ぜひご相談ください。

 

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