図面の寸法記入ルール│寸法補助記号や記入法の正しい使い方を解説【製図基礎講座 #3】
プラスチック

図面における寸法は、製品の形状・大きさ・位置を数値で正確に表現するための情報です。設計者の意図を正確に伝えるためには、寸法を決められたルールに従って記入することが欠かせません。図面の寸法記入には、JIS規格に基づいた明確なルールが定められており、これを理解していないと、誤解や製作ミスにつながる恐れがあります。
本記事では、図面の寸法記入における基本ルールから、寸法補助記号の正しい使い方、寸法記入法などを解説します。JIS規格に準拠した正確な寸法記入方法を理解しましょう。
目次
寸法記入の3つの基本要素

図面に寸法を記入する際は、JISが定める一般原則に従う必要があり、次の3つの要素で構成されます。
・寸法線…測定する長さや角度の範囲を示す線です。通常は細い実線で描かれ、両端には「端末記号」と呼ばれる矢印がつけられます。スペースのない場合には、斜線や黒丸が付けられます。
・寸法補助線…寸法を記入する対象の両端から引き出された線で、寸法線の端点を明確にする役割があります。
・寸法数値…実際の寸法値を示す数字です。
基本的な寸法記入の手順
基本的な寸法記入の手順は以下の通りです。
① 寸法を記入する対象の両端に寸法補助線を置きます。その際、対象の輪郭線から約2㎜程度離れた位置から始め、輪郭線に対して垂直に引きます。
② 2本の寸法補助線の間に寸法線を引きます。寸法線の両端に矢印を付け、それぞれの寸法補助線に接触させます。
③ 寸法数値は寸法線の上部中央に配置します。単位は「㎜」が標準ですが、図面上には単位記号は記入せず、数値のみを記入します。
④ 必要に応じて寸法補助記号を適切に使用することで、寸法の意味をより明確に伝えることができます。
このように、寸法線・寸法補助線・寸法数値の3要素で構成され、これらが組み合わさることで、製品の形状を明確に伝達することが可能です。
他の線の種類については下記リンクよりご覧いただけます。
> 図面における『線』の使い分け│線の太さ・種類・用途を解説
寸法記入時の注意点
寸法を記入する際には、いくつかの注意点があります。
主投影図(正面図)に寸法を集中させる

寸法はなるべく主投影図に集中して記入します。主投影図とは、製品の形状を最もわかりやすく表現している図のことです。通常、正面図が主投影図として選ばれることが多くなっています。
ただし、すべての寸法を無理に一つの図に詰め込むと、かえって読みにくくなる場合があります。形状の特徴を最も明確に示している投影図に、その部分の寸法を記入するという柔軟な判断も必要です。
投影図の見方については下記リンクよりご覧いただけます。
> 投影法や三面図など基本的な図面の見方を解説
寸法数値の配置方向
寸法数値は、図面の下または右側から読めるように配置します。具体的には、横方向の寸法線に記入する数値は図面の下側から読める向きに、縦方向の寸法線に記入する数値は図面の右側から読める向きに配置します。
並列寸法の配置順序

複数の寸法線を並列に配置する場合は、対象から遠い順に大きな寸法を配置します。つまり、対象の輪郭線に最も近い位置には小さな寸法を、外側に向かうにつれて大きな寸法を配置していきます。
形状内への寸法配置は避ける

寸法はできるだけ形状の外側に配置し、形状の中には記入しないようにします。形状内に寸法を配置すると、輪郭線や中心線などの要素と寸法線・寸法数値が重なり合い、図面が見にくくなります。特に複雑な形状の場合、内部に寸法を記入すると、どの線が形状を表し、どの線が寸法を示しているのか判別が困難になります。
ただし、穴の直径や内部の溝の寸法など、形状の性質上、形状内に記入した方が明確に伝わる場合もあります。
二重寸法の禁止と参考寸法

二重寸法とは、一つの図面に同じ箇所の寸法を重複して記入することを指します。例えば、すでに正面図に記入されている寸法を、平面図にも重ねて記入することは二重寸法に該当します。
また、基本的には必要な寸法のみを記入し、計算で求められる寸法は省略します。図のように、全体の長さが70㎜で、その内訳が50㎜と20㎜の2つに分かれている場合、3つすべての寸法を記入すると二重寸法になります。
ただし、どうしても記入が必要な場合は、「参考寸法」として寸法数値を「()」で囲んで記入します。
寸法補助記号の種類と正しい使い方
寸法補助記号は、寸法数値に付加して、その寸法の意味を明確にするために用いる記号です。現時点でJIS規格で規定されている寸法補助記号は多岐にわたります。
| 記号 | 意味 | 読み方 |
| φ | 直径 | ふぁい、まる |
| R | 半径 | あーる |
| CR | コントロール半径 | しーあーる |
| Sφ | 球の直径 | えすふぁい、えすまる |
| SR | 球の半径 | えすあーる |
| □ | 正方形の辺 | かく |
| ⌒ | 円弧の長さ | えんこ |
| t | 板の厚さ | てぃー |
| C | 45°の面取り | しー |
その他にも、穴深さを示す記号や「ざぐり」を示す記号、「皿ざぐり」を示す記号などがあります。
直径を示す記号「φ」

直径を示す記号は「φ」(ふぁい)です。円形状の直径寸法を記入する場合、寸法数値の前に「φ」を付けて表記します。例えば、直径20㎜の穴であれば「φ20」と記入します。
半径を示す記号「R」

半径を示す記号は「R」(あーる)です。円弧や角の丸みなどの半径寸法を記入する場合、寸法数値の前に「R」を付けて表記します。例えば、半径15㎜の角の丸みであれば「R15」と表記します。
コントロール半径を示す記号「CR」
コントロール半径を示す記号は「CR」(しーあーる)です。これは通常の半径を示す「R」とは異なり、厳密な半径ではなく、複数の曲線や面をなめらかにつなぐために指定するなど、おおよその丸みを指示する場合に使用します。
球の半径・直径を示す記号「Sφ・SR」

球の直径を示す記号は「Sφ」(えすふぁい)、球の半径を示す記号は「SR」(えすあーる)です。この「S」は「Sphere(球)」の頭文字のことです。図面上では球の一部しか見えない場合でも、「Sφ」「SR」の記号によって球形状であることが明確に伝わります。
正方形の辺を示す記号「□」

正方形の辺の長さを示す記号は「□」(かく)です。正方形断面を持つ形状の寸法を記入する場合に使用します。
円弧の長さを示す記号「⌒」
円弧の長さを示す記号は「⌒」(えんこ)です。通常、円弧は半径を示す「R」で指定しますが、機能上や設計上、円弧の長さそのものを指定する必要がある場合に「⌒」記号を使用します。
板の厚さを示す記号「t」

板の厚さを示す記号は「t」(てぃー)です。板金部品や平板材料の厚さ寸法を記入する場合に使用します。「t」は「thickness(厚さ)」の頭文字です。図面上では、板厚を個別に寸法線で示すよりも、「t」記号を使用することで簡潔に表現できます。
面取りを示す記号「C」

面取りとは、製品の鋭利なエッジを無くすため、45度の角度で角部を削り取る加工のことです。面取りの寸法は寸法数値の前に「C」(しー)を付けて表記します。例えば、45度の角度で10㎜の面取りをする場合、「C10」と表記します。
寸法記入法の種類と使い分け
複数の寸法を記入する際には、4種類の基本的な記入法があります。それぞれの特徴を理解し、部品の形状や加工方法に応じて適切に使い分けることが重要です。
直列寸法記入法

直列寸法記入法は、各寸法を直線上に連ねて記入する方法です。
直列寸法記入法の利点は、加工順に近い寸法表現で、シンプルで理解しやすい図面が作成できる点です。一方で、累積公差が発生しやすいという欠点があります。各寸法の公差が積み重なるため、全体の長さの誤差が大きくなる可能性があります。外形よりも「加工順序」を優先したい場合に最適です。
並列寸法記入法

並列寸法記入法は、基準となる部分から各寸法を個別に並べて記入する方法です。この記入法では、基準面(または基準点)を決定し、そこからの距離をすべての箇所について記入します。寸法線は等間隔に並べて配置します。
並列寸法記入法の利点は、累積公差が発生しないことです。すべての寸法が基準点から独立して測定されるため、個々の寸法誤差が他の部分に影響しません。
累進寸法記入法

累進寸法記入法は、基準となる部分からの寸法数値を共通の寸法線上に記入する方法です。並列寸法記入法を省スペースに改善したもので、意味は並列寸法記入法と同じです。この記入法では、基準点に起点記号「〇」を配置し、共通の一本の寸法線上に各位置の寸法数値を記入します。
累進寸法記入法の利点は、図面のスペースを節約できることです。複数の寸法線を引く必要がなく、一本の寸法線で多くの寸法情報を表現できます。また、並列寸法記入法と同様に、累積公差が発生しないため精度管理がしやすいという利点もあります。
座標寸法記入法

座標寸法記入法は、個々の点の位置を表す寸法を座標によって記入する方法です。XY座標の原点を決め、各点の座標値を表形式で示します。この記入法は、大きな板金部品に多数の穴が開いた部品や、複雑な穴配置を持つ部品に使用されます。
座標寸法記入法の利点は、多数の穴位置を明確かつコンパクトに表現できることです。図面上に穴位置をすべて寸法線で示すと、寸法補助線が重なり非常に見づらくなるため、座標表によって整理します。
まとめ
図面における寸法は、製品を正しく加工・組立するために、形状や大きさ、位置を数値で指示する情報です。JIS規格に基づいた寸法記入の基本ルールを守ることで、設計意図が明確に伝わり、製造現場でのミスを防ぐことができます。
まずは、寸法線・寸法補助線・寸法数値を正しく配置し、適切な寸法補助記号を使用することが基本です。また、部品の形状や加工方法に応じて、直列・並列・累進・座標の各寸法記入法を適切に使い分けることで、より実用的な図面を作成できます。
寸法記入の基本ルールをしっかりと身につけ、実践していきましょう。
㈱関東製作所は、金型製作や樹脂成形を中心としたものづくり企業です。設計・製造の現場で培った経験を活かし、「製図基礎講座シリーズ」として、設計初心者の方にも分かりやすく、現場で役立つ情報をお届けしています。
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