寸法公差とは?図面表記やはめあい公差について解説【製図基礎講座#6】
プラスチック

モノづくりをする際、図面に記載された寸法とまったく同じ大きさの製品を作ることはできません。加工機の精度や材料の性質、温度などの影響によって、実際にできあがる製品には必ずわずかな寸法のばらつきが生じます。
そこで必要になるのが「公差」です。公差を設定することで、「この範囲であれば製品として問題ない」という許容範囲を図面上で明確にできます。
本記事では、公差のなかでも基本となる寸法公差について、図面での表し方やはめあい公差の種類・読み方までわかりやすく解説します。
公差とは?
公差とは、設計上の基準となる寸法や形状に対して許容される「ばらつきの範囲」のことです。製造現場では、どれほど高精度な工作機械を使用しても、図面に記載された寸法どおりに部品を完全に加工することはできません。工作機械の精度や材料の特性、加工条件などの影響により、必ずわずかな誤差が生じます。そこで、製品として必要な機能を満たし、問題なく組み立てられる範囲をあらかじめ図面上で定めておく必要があります。
公差の表し方
公差は「寸法公差」と「幾何公差」に大別できます。
| 種別 | 方法 | 管理対象 | 公差の表示法 |
| 寸法公差 (はめあい公差含む) |
数値による表示 | 長さ、幅、高さ、直径など | 基準寸法に対して上限値・下限値を数値で指示する |
| 記号(公差域クラス)による表示 | 組み合わせる穴と軸など | ISOで規定された記号と等級で指示する | |
| 幾何公差 | 直角度、平面度、真円度など | 形状、姿勢、位置、振れ | 幾何学的な公差の種類を表す記号と数値で指示する |
寸法公差は、長さや直径といった「大きさ」を数値で管理する公差であり、図面で最も頻繁に用いられます。
一方、幾何公差は部品の形状や姿勢、振れなどを管理する公差です。寸法公差だけでは、面の反りや穴の位置ずれまで十分に指示できないため、重要な形状や位置を管理したい場合は、寸法公差と幾何公差を適切に使い分ける必要があります。
本記事では、寸法公差について解説します。
図面の基礎や寸法記入ルールから学びたい方は、下記リンクよりご覧いただけます。
> 投影法や三面図など基本的な図面の見方を解説
> 図面の寸法記入ルール│寸法補助記号や記入法の正しい使い方を解説
寸法公差
寸法公差とは、長さや直径といった「大きさ」に対して設定する公差のことです。図面を扱ううえで、最初に習得すべき最も基本的な公差です。

上の図は、基準寸法を「10.0㎜」とした場合の寸法公差の考え方を示した図です。図に示すとおり、基準寸法が10.0mmであっても、実際に許容される寸法には幅があります。この上限と下限の差、すなわち「±0.1㎜」にあたる部分が寸法公差になります。図面上では「10±0.1」のように表記され、実測値が9.9㎜〜10.1㎜の範囲に収まっていれば合格品となります。
寸法公差の図面表記
寸法公差の表記方法は、「両側公差」と「片側公差」の2種類があります。

- 両側公差:基準寸法を中心に、プラス側とマイナス側に同じ幅で許容する(例:10±0.1)
- 片側公差:基準寸法に対して、プラス側またはマイナス側のどちらか一方にのみ許容する(例:10+0.2/0)
片側公差では許容差の上限値を上に、下限値を下に並べて表記するのが一般的です。また、プラス側とマイナス側の両方に許容差を設け、それぞれ異なる値を指定する場合もあります。
設計意図に応じて、どちらの表記が適切かを判断することが重要です。組み立てのしやすさを優先するのか、一方向へのズレのみを許容したいのかによって、選ぶべき表記方法は変わってきます。
普通公差
普通公差とは、図面上で特に公差を指定していない寸法に、一括して適用する公差です。
図面に記載するすべての寸法に「±0.1」などの公差を書き込むと、図面が見にくくなります。そこで、重要な寸法には個別公差を指定し、それ以外の寸法にはJISで定められた普通公差を適用する場合が多いです。
JIS B 0405では以下の4等級が定められています。
| 等級 | 記号 | 3を超え6以下 | 6を超え30以下 | 30を超え120以下 |
| 精級 | f | ±0.05 | ±0.1 | ±0.15 |
| 中級 | m | ±0.1 | ±0.2 | ±0.3 |
| 粗級 | c | ±0.3 | ±0.5 | ±0.8 |
| 極粗級 | v | ±0.5 | ±1 | ±1.5 |
※JIS B 0405の一部を抜粋
図面では、表題欄や注記欄に「普通公差 JIS B 0405-m」などと記載します。
寸法公差を正しく読み取るには、公差だけでなく、図面から製品の形状を正しくイメージできることも重要です。
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はめあい公差
はめあいとは
はめあいとは、同じ基準寸法を持つ穴と軸を組み合わせたときの関係のことです。
機械や製品は、さまざまな部品を組み合わせることで成り立っています。例えば、回転軸と軸受、位置決めピンと穴、歯車と軸なども、穴に軸をはめ込む構造です。「部品を滑らかに動かす」「正確な位置に固定する」「簡単に抜けないようにする」といった目的ではめあいが利用されています。

穴と軸を組み合わせたときの状態は2通りあります。穴の内径が軸の外径より大きい場合は、両者の間に「すきま」ができます。反対に、軸の外径が穴の内径より大きい場合は、間に「しめしろ」が生じます。例えば、軸を回転させたい部分には、動きを妨げない適度にすきまが求められます。一方、穴と軸を強く固定したい部分では、簡単に抜けないだけのしめしろが必要です。
このように、設計者は目的によって必要なすきまやしめしろを確保できるように、穴と軸の公差を適切に組み合わせなければなりません。この寸法の組み合わせを管理するものが、はめあい公差です。
はめあいの種類
はめあいの種類には次の3種類があります。
- すきまばめ:常に軸が穴よりも小さいはめあい。回転しやすい。
- 中間ばめ:穴と軸がほぼ同じになるはめあい。位置決めなどに使用される。
- しまりばめ:常に軸が穴よりも大きいはめあい。しっかりと固定される。

どのはめあいを選ぶかは、部品を回転させたいのか、しっかり固定したいのかといった用途や機能などから判断します。
はめあい公差(公差域クラス)の図面表記

はめあい公差は「基準寸法」と「公差域クラス」を組み合わせて表記します。例えば、上の図のように「Φ20H7」と記載されている場合、Φ20が基準寸法、H7が公差域クラスになります。
公差域クラスとは、アルファベットと数字の組み合わせで記号化されたもので、アルファベットが公差域の位置、数字が公差域の幅を示します。
公差域の指示記号

アルファベットは、基準寸法に対して公差がどの位置にあるかを示します。大文字のアルファベット(A~ZC)は穴、小文字のアルファベット(a~zc)は軸の公差域を表します。
上の図のように、基準線より上側の指示記号が「基準寸法より大きい範囲」、下側の指示記号が「基準寸法より小さい範囲」になります。それにより、すきまばめになるのかしまりばめになるのかが異なります。
| 公差域の位置 | 穴の場合 | 軸の場合 |
| 基準線より上側 | 穴が大きくなり、すきまが増える(A~H) | 軸が太くなり、しめしろが増える(k~zc) |
| 基準線より下側 | 穴が小さくなり、しめしろが増える(K~ZC) | 軸が細くなり、すきまが増える(a~h) |
IT公差等級
数字は公差域の幅を表すIT公差等級です。「IT7」「IT6」のように、ITに続く数字によって等級を示します。IT公差等級はJIS・ISOで規定されており、数字が小さいほど公差幅が狭く、高い寸法精度が求められます。
ただし、「IT7」であれば、すべての寸法で同じ公差幅になるわけではありません。実際の公差幅は、IT公差等級と基準寸法の両方によって決まります。

※一部抜粋
はめあい公差の読み方
はめあい公差は、基準寸法に対応する行と、公差域クラスに対応する列を寸法許容差表で確認することで、実際の最大許容寸法・最小許容寸法へ置き換えられます。
ここでは、穴が「φ20 H7」、軸が「φ20 f6」の組み合わせを例に、はめあい公差を読み取ってみましょう。
穴「Φ20 H7」の許容寸法を読み取る
まず、穴の「φ20 H7」を寸法許容差表(※一部抜粋)で確認します。

まず、基準寸法は「Φ20」なので、表の「18を超え、24以下」の行を確認します。次に、穴の公差域クラスである「H7」の列を確認します。該当する欄には、上段に「+21」、下段に「0」と記載されています。 表の数値は㎛で表されているので、「×0.001」することで㎜に換算します。
よって、穴の許容寸法は次のようになります。
最大許容寸法:20+0.021=20.021㎜
最小許容寸法:20+0=20.000m㎜
したがって、完成した穴の直径が20.000~20.021㎜の範囲に入っていれば、寸法公差を満たしていると判断できます。
軸「φ20 f6」の許容寸法を読み取る
次に、軸の「φ20 f6」を確認します。

まず、基準寸法は「Φ20」なので、表の「18を超え、24以下」の行を確認します。次に、軸の公差域クラスである「f6」の列を確認します。該当する欄には、上段に「-20」、下段に「-33」と記載されています。
よって、軸の許容寸法は次のようになります。
最大許容寸法:20-0.020=19.980㎜
最小許容寸法:20-0.033=19.967㎜
したがって、完成した軸の直径が19.967~19.980mmの範囲に入っていれば、寸法公差を満たしていると判断できます。
穴と軸の寸法から、はめあいの種類を判断する
最後に、穴「φ20 H7」と軸「φ20 f6」を組み合わせたときの、すきまを確認します。
最小すきまは、最も小さい穴と最も大きい軸を組み合わせて求めます。
・最小すきま=20.000-19.980=0.020㎜
最大すきまは、最も大きい穴と最も小さい軸を組み合わせた場合です。
・最大すきま=20.021-19.967=0.054㎜
つまり、φ20 H7の穴とφ20 f6の軸を組み合わせると、0.020~0.054㎜のすきまが生じます。穴が最小、軸が最大の状態でもすきまが残るため、この組み合わせは「すきまばめ」となります。
まとめ|寸法公差は機能とコストを考えて設定する
寸法公差とは、長さや直径などの大きさについて、製品として許容できる寸法のばらつきの幅を定めるものです。図面では「±0.1」のように寸法許容差を数値で指示するほか、個別に公差を記載しない寸法には普通公差を適用する方法があります。また、穴と軸を組み合わせる部分では、必要なすきまやしめしろに応じて、すきまばめ・中間ばめ・しまりばめを使い分けます。
公差を設定するときに重要なのは、必要以上に厳しい公差を指定しないことです。公差を小さくすれば寸法のばらつきを抑えられる一方、高い加工精度が求められ、加工時間の増加や再加工などによって製造コストが上がる可能性があります。設計者は製品の精度を確保するために公差を小さくしたくなる一方、製造側にとっては、安定して加工できるように公差に余裕があることが望ましい場合があります。製品に必要な機能を満たせる範囲で、できるだけ製造しやすい公差を設定することが、適切な公差設計の基本です。「なぜこの寸法にこの公差が必要なのか」を考え、製造コストまで意識しながら公差を設定することが重要です。
㈱関東製作所では、設計・製造の現場経験をもとに「製図基礎講座シリーズ」を展開しています。公差以外にも、図面を読み書きするために必要な基礎知識を解説していますので、ぜひ他の記事もあわせてご覧ください。
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