バイオプラスチックを知る 製造現場から考える環境問題を意識した次世代プラスチック素材とは
プラスチック
昨今、バイオプラスチックというものを耳にすることがありますが、バイオプラスチックとはどんなものでしょうか。
「バイオプラスチック」とは、一般的に微生物によって生分解される「生分解性プラスチック」と、バイオマスを原料に製造される「バイオマスプラスチック」の総称です。
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目次
「生分解性プラスチック」と「バイオマスプラスチック」の違い
「生分解性プラスチック」は、ある一定の条件の下で自然界の微生物によって二酸化炭素と水に完全に分解されるプラスチックで機能や物性は通常のプラスチックと同等です。
一方「バイオマスプラスチック」ですが、まずバイオマスとは、エネルギー源として利用できる生物体、また、それらの生物体をそのように利用することを意味します
すなわちバイオマスプラスチックとは、バイオマスから作られた再生可能なバイオマス資源を原料とし、化学的または生物学的に合成することにより得られるプラスチックのことです。
バイオマスには、主にトウモロコシ、藻類、ジャガイモ、大豆、サトウキビ、木などの再生可能な植物が利用されます。
どちらもバイオプラスチックであり混同しやすいですが、
生分解が可能なものが「生分解性プラスチック」、
再生可能なバイオマス資源を使用しているものが「バイオマスプラスチック」です。
したがってバイオプラスチックはそこの2点の違いで区別されます。
またバイオマスプラスチックは、再生可能資源であるバイオマスを原料としていれば、生分解性という機能がなくてもバイオプラスチックに含まれます。
逆に再生可能なプラスチックであればバイオマスプラスチックであるといえるわけです。
例えばサトウキビなど植物由来のバイオプラスチックであっても生分解性が低いので、生分解性プラスチックに該当せず、「バイオマスプラスチック」側の要素が強いと言えます。
製造現場から考える環境問題 答えの一つがバイオプラスチック
現在、私たちの身の回りにあるほとんどのプラスチックは石油などの化石資源に依存しており、プラスチック製品は私たちの生活に不可欠なものとなっています。
日常生活でプラスチックのない生活は考えられないのではないでしょうか。
1950年代でプラスチックの生産量は200万トンでしたが、2015年には190倍にも膨れ上がっています。
1950年から2015年までのプラスチック総生産量は、製造工程で必要になる添加剤を含んだ総量は83億トンにものぼります。その中で30%にあたる25億トンが、現在製品として使用され、残り70%の58億トンは使用済のものです。
廃棄プラスチックの回収が日本では進んでいますが、2010年には世界で1270万から4800万トンのプラスチックが海に流出したといわれています。
海に流れでたプラスチックは長い間分解されずに残存します。
その結果、水や紫外線などによって細かく粉砕されますが分解されることはなく回収が困難なマイクロプラスチックと呼ばれる厄介な物質に変化します。
その中で数十μm以下のマイクロプラスチックは魚介類に摂取され体内に蓄積されて最終的には生態系や人体に悪影響を与えます。
こういった問題を解決するためにも自然環境の中で生分解されるプラスチックの開発が最重要事項として挙げられます。
「生分解性プラスチック」のメリット
「生分解性プラスチック」の持つメリットとしては、自然環境下で生分解するため廃棄しても回収する必要がないことが挙げられます。
農作物の株元を覆うために使うマルチフィルムを生分解性プラスチックにすれば、作物収穫後に、廃棄物の回収が不要となり、経費抑制なります。
その特性から主に、食品トレーや生ゴミ袋、レジ袋などに使用されます。
「バイオマスプラスチック」のメリット
「バイオマスプラスチック」のメリットとしては焼却処分した場合でも、バイオマスのもつカーボンニュートラル性から、大気中のCO2の濃度を上昇させないという特徴があげられます。
主に衣料繊維や自動車などに使用されます。
CO2の排出量をプラスにしない!カーボンニュートラル
カーボンニュートラルとはライフサイクル全体で見たときに、CO2の排出量と吸収量とがプラスマイナスゼロの状態になることを指します。
カーボンニュートラルは大きく分けて2つの文脈で使われます。
一つはエネルギー分野においては燃焼時に二酸化炭素を排出しますが、植物の光合成によりCO2を吸収するので、実質的にはCO2の排出量はプラスマイナスゼロになる状態を指します。
もう一つは社会や企業における生産活動でやむをえず出てしまうCO2排出分を、排出権の購入や植樹などによって相殺し、実質的にゼロの状態にすることを指します。
生分解性が発現する環境は、生分解性プラスチックの種類による
メリットだけではありません。
先ほど説明したように、生物分解ができない非分解性のバイオプラスチックもあれば、石油や化石資源を原料とするものもあります。
生分解性を評価する環境は、おおまかにコンポスト(高温多湿)、土壌環境、水環境の3点があり、どの環境で生分解性を発現するかは生分解性プラスチックの種類によります。
生分解性プラスチックのほとんどは、海中などに出てしまうと、分解に極めて長い時間を必要とするか、かなりの部分が分解されないのが実際のところといえます。
昨今、バイオプラスチックを環境汚染の救世主と一般的に考えられているところがありますが、石油系のものもあり、分解に時間がかかることを考えると、バイオプラスチックだからといって自然界に廃棄しても大丈夫という認識があれば改める必要があります。
プラスチック誕生の歴史と、製造現場が考えるべき未来のプラスチック環境
「プラスチック」という名称の語源はギリシャ語の「型に入れて作るもの」を意味する「プラスティコ」からきており、様々な形状に加工しやすい素材の特性を表しています。
このことからもプラスチックと金型はきっても切れない関係といえます。
史上初のプラスチックは1835年にフランス人化学者・物理学者のルニョーが作成した塩化ビニルとポリ塩化ビニルの粉末といわれています。
しかし商品化されたのは1869年にジョン・ハイアットという印刷工が発明した「セルロイド」が当時は高価な象牙をつかっていたビリヤードの玉の代替品として使用されたのが始まりです。
世の中を快適にする可能性を秘めたプラスチックですが、第二次世界大戦の勃発がプラスチックの大量生産のきっかけをつくり、軍事徴用により金属類が不足し、民間では代用品としてのプラスチックの需要が高まったことは皮肉なことかもしれません。
このようなプラスチックを取りまくさまざまな状況の中で我々には何ができるのか?
廃棄プラスチックを再利用するのかバイオプラスチックを利用するのか?
関東製作所は昭和23年にガラス用金型製造をスタートし昭和31年にはブロー金型製造を始め今日に至ります。
2019年にはアパレルメーカー様とともに、海洋汚染の原因の一つとなっている使用済みペットボトルのキャップを材料として使ったプラスチック製品の開発に関わりました。
またそれと並行して、バイオプラスチックを使った製品の開発にも積極的に取り組んでまいります。
射出成形ソリューションサイト
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