「良い製品なのに売れない…」その原因は”伝え方”にあった【関東製作所式 製造業マーケティング実践講座#2】
マーケティング

「技術力には自信がある。品質にも妥協していない。なのに、なぜか問い合わせが少ない…」
製造業を営む多くの経営者や営業担当者が、このような悩みを抱えています。自社の製品やサービスに絶対的な自信を持っているにもかかわらず、思うように受注に結びつかない。その原因は、技術力や品質の問題ではなく、「伝え方」にあるかもしれません。
本記事では、技術力は高いのに成果に結びつかない理由と、その解決策について解説します。
この記事は、「製造業マーケティング実践講座」シリーズの第2弾です。
第1弾では、「なぜ製造業にマーケティングが必要なのか」を解説しました。
>なぜ製造業にマーケティングが必要なのか?【関東製作所式 製造業マーケティング実践講座#1】
目次
なぜ技術力があるのに選ばれないのか?
多くの製造業のWebサイトを見ると、ある共通したパターンが見えてきます。それは、「技術者目線で書かれている」という点です。
製造業のWebサイトに共通する3つの問題
多くの製造業のWebサイトは、「技術者目線で書かれている」という共通の問題を抱えています。
保有設備や加工精度といった技術情報は並んでいても、顧客が知りたい「自分の課題を解決できるのか」という視点が欠けています。

専門用語も同様です。製造業の現場では当たり前の言葉でも、顧客には理解できない場合があります。
実際、製造業の営業担当者は技術営業出身のケースが多く、打ち合わせで専門用語を無意識に使ってしまうことがよくあります。関東製作所でも、「ウェルドライン」「ヒケ」といった用語を使って説明した際、顧客は理解できていない様子でしたが、その場では聞き返しづらく、後日改めて質問をいただくことがありました。
専門用語を使うこと自体が悪いわけではありませんが、それを補足する説明や、顧客にとってのメリットが併記されていないことが問題です。例えば、「ウェルドラインを抑制できます」ではなく、「ウェルドライン(溶けた樹脂が合流する際にできる線状の跡)を抑制することで、外観品質が向上します」と伝えれば、顧客は理解しやすくなります。
この文章で重要なのは「外観品質の向上」です。お客様が最終的に求めているのは、「高品質の外観」であって、その過程は初めの選定段階では不要です。もちろん、具体的な技術の話は、「外観品質の向上」の根拠として、信頼を与える情報ですが、端的に伝える時にはキーワードとして弱いです。
- 顧客は3秒で判断している
- Webマーケティングの世界では、ユーザーがそのサイトに留まるか、それとも離脱するのかを判断する時間は「3秒」と言われています。
この「3秒」で判断できる情報を掲載できるかが大きなキーポイントになります。
・自分に関係があるのか?
・自分の悩みを解決できそうか?
・信頼できそうか?
おおよそ上記3点を3秒で判断して、そのサイトを見るのか判断します。
顧客は「性能」ではなく「価値」で判断している
製造業が陥りがちな誤解の一つが、「良い製品を作れば売れる」という考え方です。技術力や品質は重要ですが、顧客の意思決定プロセスは、製品の性能だけで決まるわけではありません。
顧客が製造業に発注を検討する際、最も重視しているのは「自分たちの課題を解決してくれるか」という点です。
たとえば、新製品の試作を急いでいる顧客にとって、最も重要なのは「短納期で対応してくれるか」という点かもしれません。また、量産段階で品質のばらつきに悩んでいる顧客にとっては、「安定した品質を保証してくれるか」が最重要課題です。
「当社は高精度加工ができます」と伝えても、顧客の心には響きません。一方で、「±0.01mmの高精度加工により、お客様の製品の組み立て精度が向上し、不良率を低減できます」と伝えれば、顧客は自分の求めていることを具体的にイメージできます。
顧客が意思決定する際に重視するのは、以下のような具体的なベネフィットです。
・コスト削減につながるか
・納期短縮が実現できるか
・品質向上が期待できるか
・リスクを回避できるか
これらのベネフィットを、自社の技術や製品のメリットと結びつけて伝えることが重要です。
- ベネフィット訴求
- 顧客に対して「その製品やサービスによって、自分の未来がどう良くなるか」を伝える手法をベネフィット訴求と言います。
メリット訴求と混同するケースが多いですが、「高精度加工」は特徴や強みであり、メリット訴求になります。「組立精度の向上」「不良率の低減」は高精度加工で得られる恩恵であり、ベネフィット訴求です。
お客様が求めていることは、高精度加工(メリット)の先にあるベネフィットのはずです。メリットだけを並べるだけでは不十分で、ベネフィットとつなげることが顧客獲得の確度を高めるポイントです。
技術者の言葉と顧客の言葉のズレ
製造業の現場では、技術者が日常的に使う言葉と、顧客が理解できる言葉との間に大きなギャップがあります。このギャップを埋めることが、「伝え方」を改善する第一歩です。
「ヒケやソリを最小化」は顧客に何を意味するのか
技術者にとって「ヒケやソリを最小化できる」は、自社の成形技術や金型設計力を表す重要な指標です。しかし、この言葉が顧客にとって何を意味するのか、具体的に伝えなければ価値は伝わりません。

このように、技術的な言葉を「顧客目線のベネフィット」という文脈で語り直すことで、初めて価値が伝わります。
なぜ”翻訳”が必要なのか
技術者と顧客の間に「言葉のズレ」が生じる理由は、両者が持つ背景知識や関心事が異なるからです。
【技術者の関心】
・どのような技術を使っているか
・どれだけの精度や性能を実現できるか
・どのような設備を保有しているか
【顧客の関心】
・自分の課題を解決してくれるか
・コストやリスクはどうか
・信頼できる会社なのか
技術者は「技術そのもの」に関心がありますが、顧客は「技術によって得られる成果」に関心があります。この視点の違いを理解し、技術者の言葉を顧客の言葉に”翻訳”することが、伝え方改善の鍵となります。
技術を顧客のベネフィットに変換する3ステップ
技術や製品の説明を、「顧客のベネフィット」に語り直す具体的な方法を見ていきましょう。

このように、3つのステップを踏むことで、技術を「顧客にとっての価値」として明確に表現できます。重要なのは、ステップ2で「顧客がどんな課題を抱えているか」を具体的に想像することです。
ただし、想像だけでは不十分な場合もあります。
㈱関東製作所では、Webサイトのランディングページを制作する際、既存顧客に直接ヒアリングを行いました。「どのような課題を抱えて当社に相談されたのか」「当社のどこに価値を感じていただいたのか」といった質問を通じて、顧客の生の声を集めたのです。顧客の生の声は、まさにベネフィットです。自社の強みや特徴が顧客のどんな課題を解決するのかを自分たちの予測だけではなく、ヒアリングすることで答え合わせを行います。
- ランディングページ(LP)
- 特定の商品やサービスに特化した、問い合わせや資料請求などの行動を促すことを目的としたWebページのこと。通常のWebサイトと異なり、1ページで完結し、訪問者を「問い合わせ」という一つのゴールに導く構成になっている。
- 【ランディングページ参考】
- 金型製造を最短2週間!小ロット射出成形を、低コストかつ高品質で提供
その結果、「自社では当たり前と思っていた技術が、実は顧客にとって大きな価値だった」という発見がありました。例えば、金型仕様の提案(丸投げ対応)は社内では標準的な対応でしたが、顧客にとっては「金型に対する知見がないため、技術的なアドバイスをもらえる」という大きなメリットでした。
このように、顧客ヒアリングを行うことで、より正確に「顧客にとっての価値」を言語化できます。既存顧客への簡単なアンケートや、商談時の会話から課題を聞き出すなど、小さなことから始めることができます。
- ペルソナ分析とN1分析
- どちらもマーケティング施策を検討する上で必要な顧客像のこと。
・ペルソナ・・・仮想した顧客で、マーケターが自社の顧客や今後獲得したい顧客像をイメージして設定したもの。
・N1・・・実際の顧客のことで、直接相手にヒアリングして顧客像を作ること。 - 顧客数の少ない初期段階はペルソナ分析が中心だが、ある程度顧客獲得できたあとは、N1分析も併用すると、予測と現実の差などが明確になり、より正確なマーケティング施策の検討が可能になる。
まとめ
多くの製造業のWebサイトは、技術仕様や設備情報が中心で、顧客のメリットが見えにくい状態になっています。しかし、顧客が本当に知りたいのは、「性能」ではなく「自分の課題を解決してくれるか」という「価値」です。
技術者の言葉と顧客の言葉には大きなズレがあります。このズレを埋めるためには、技術を「顧客の課題解決」という文脈で語り直す”翻訳”が必要です。
伝え方を変えるだけで、同じ技術力・製品力でも成果は大きく変わります。技術力に自信があるのに成果に結びついていない企業は、まず自社のWebサイトや営業資料を見直し、「顧客視点」で情報が伝わっているかを確認してみてください。
製造業の競争力は、「作る力」だけでなく、「伝える力」によっても決まります。技術力×伝える力で、選ばれる企業を目指しましょう。
次回は、製造業の中でマーケティングを始めるための具体的な実践方法について解説しています。リソースが限られた中でも、どこから手をつけるべきか、実際の第一歩をお伝えしていますので、下記よりぜひご覧ください。
>製造業マーケティング立ち上げ初期に守るべき5つの鉄則【関東製作所式 製造業マーケティング実践講座#3】
製造業×マーケティングを実践する関東製作所
株式会社関東製作所は、射出とブローの金型製作、量産成形、自動機の製作などを手掛ける、75年以上の歴史を持つ製造業です。製造業としては珍しくマーケティングにも力を入れており、Webを活用した戦略を継続することで、現在では年間500件以上の問い合わせをWeb経由で獲得しています。
関東製作所式 製造業マーケティング実践講座では、製造業だからこそ分かる苦悩や、実践してきた工夫を通じて得た知見を皆様にお伝えしていきます。技術力はあるのに伝わらない、営業リソースが足りない、新規顧客開拓の方法が分からない――そんな現場の課題に向き合い続けてきた当社だからこそ語れる、リアルなマーケティングの必要性について解説します。
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