「製造業のコンテンツ作りはなぜ難しいのか?」~製造業マーケのリアルvol.5~
マーケティング

関東製作所マーケティング課の吉井です。
当社では、マーケティング施策の中でも特に「コンテンツマーケティング」に注力しています。
コンテンツマーケティングとは、ユーザー(見込み客)にとって価値のある情報を届け、信頼関係を築きながら、最終的にファン(顧客)になってもらうための手法です。
「情報を発信するだけだからラクでしょ」と思ったら大間違い。
今回は、製造業でコンテンツマーケティングを進めるうえで直面しやすい課題と、当社で実際に試行錯誤した進め方についてお話しします。
コンテンツのテーマ選定(SEO対策)はどうするの?
コンテンツ制作の鍵はSEO対策です。
キーワードの検索ボリュームからテーマを選定するのが基本です。
例えばレストランなら、駅前や繁華街で店を出すのと、郊外で店を出すのでは、集客力に大きな違いがあります。ただし、駅前や繁華街には競合店も多いので、どんな場所でどんな店を出すかを検討する必要があります。
コンテンツも同じようにどんなテーマ(キーワード)を選定するか、検索ボリュームや競合サイトの内容などを吟味した上でコンテンツ計画を立てることが重要です。
BtoBでは、検索ボリュームが少ないものが多い
BtoBの代表でもある製造業では、ニッチな業界ほどキーワードの検索ボリュームが少ないものが多いです。
例えば、プラスチック製品の製造方法で比較すると、下記のようになります。
| キーワード | 月間平均 検索ボリューム |
補足 |
| 射出成形 | 5,400 | プラスチック製品の製造方法では圧倒的なシェアを持つ製造方法のため、検索数が多い。 |
| 押出成形 | 1,600 | 全体の2割程度のシェアの製造方法。 |
| ブロー成形 | 880 | 全体の1割程度のシェアの製造方法。 |
| 回転成形 | 170 | 全体の1割未満のシェアの製造方法。 |
| 3Dプリンター | 135,000 | 一般家庭にも普及し始めており、一般人でも検索するキーワードのため圧倒的に多い。 |
同じプラスチック製品の製造方法なのに、これだけ数の差が発生します。
ニッチな業界ほど検索ボリュームは少なく、そもそも探しているユーザーが少ないです。時間をかけて作っても、それに見合う効果があるのか検討が必要です。
だからといって、検索ボリュームの多いキーワードだけでコンテンツを準備しても、SEOとしては効果が出ません。
当社の場合はどうやったのか?
検索ボリュームの数が少なすぎても効果が薄いし、数が多すぎても競合が多くて勝てない…
じゃあ、どうするの?って感じですよね。
当社もはじめの頃は執筆者の書きたい(書きやすい)テーマを優先してコンテンツ制作を進めましたが、なかなか効果が出ずに悩んでいました。
そこで、下記のような方針で検討しました。
1. 最低ラインの検索ボリュームを決める
2. メインキーワードの前に周辺キーワードも攻める
あまりに少ない検索ボリュームは、費用対効果が薄いため、後回しにして、基準値を超える検索ボリュームのキーワードからコンテンツ執筆をしました。
また、本丸(メイン)のキーワードは競合も多いので、その周辺キーワードからコンテンツ執筆して、SEO効果を高める戦略で進めました。
執筆するだけではなく、事前の戦略を立てることで、より早く大きな効果を得ることができます。
コンテンツを毎日頑張って制作しても効果が出なければ、経営層からも「そんなに効果が出ないならやめようか」なんて言われてしまうかもしれませんので、戦略はしっかり立てましょう!
機密情報とノウハウの壁
テーマ(キーワード)が決まったからといって、実際にコンテンツ化できるかは別の問題です。
マーケティング担当者が「これを書きたい!」と計画しても、コアなノウハウや、機密情報にあたるものは当然のことながらWeb公開はできません。
必殺の「それはノウハウだからな~」が出たら要注意
製造部門の技術者にヒアリングしているとよく出るフレーズ
「それはノウハウだから」
その懸念はもっともです。
確かに会社の技術力やノウハウが他社に流出するのは、技術的な競争力を失う原因にもなるため、NGなのは理解できます。
だからといって、何も情報発信できなければ、顧客獲得もできませんよ!
こうした技術者達への説明や交渉もマーケティング担当の仕事です。
また、ノウハウのコアな部分は隠しつつ、顧客に対して魅力的な情報になるようにコンテンツを作るのが、マーケティング担当やライターの腕の見せ所です。

事例コンテンツにできるものが少ない
いまだにこれに関しては困っています。
特に受託加工をメインにしている製造業の会社は困るところです。受託加工の多くは、開発品が多く、前段の話に近いですがお客様のノウハウや技術情報なので、そもそも事例公開NGなケースが多いです。
自社製品を販売している会社であれば、導入事例などを交渉次第で許可が出やすいですが、受託での開発/加工/生産をしている会社はハードルが非常に高いです。
事例のコンテンツは顧客獲得において非常に重要です。
前段と同様にお客様への交渉が非常に重要です。どこまでの情報が公開NGなのかの見極めをして、開示できる範囲で事例紹介に協力して頂けるようにお願いしてみましょう。
執筆者(ライター)の確保が大変
製造業となると技術系のコンテンツになる可能性が高いです。
技術に関する知識が深いマーケティング担当であれば、自身で執筆することができますが、そうではないケースが多いように感じます。
私の場合も異業種から転職してすぐにコンテンツ制作をスタートしたため、自身で執筆するには限界がありました。
製造部門の技術者に執筆してもらう
技術系であれば、現場知識のある技術者にコンテンツ執筆をしてもらう方法があります。
しかし、現場の職人気質のスタッフは、筆下手な人も多く、文章の手直しが必要なケースが多々発生します。
もしくは専門的すぎて、もはや論文レベルの人もいました。
逆に、いつもガサツな感じの人が意外と魅力的な文章を作るケースもありましたが…(後々、その人の息子が芸大に通っていると聞き、印象と違って芸術的な気質もあるのかと分かりました)
これに関しては、一度チャレンジしてみる価値はありますが、文章の手直しに時間がかかる場合は、あまりおススメできないです。
文才のある原石を探すぐらいのつもりでトライしてみてください。
外部のライター(フリーランス)に執筆依頼する
フリーランスのライターはピンキリですが、1文字あたり2~10円程度で執筆してくれるのが相場感です。経験値や業界特化のライターは比較的単価が高いですが、それを選ばなければ、低い単価で依頼が可能です。
やはり、ライターとして仕事をしているので文章は上手ですが、専門性の担保が難しいです。
製造業の技術コンテンツを執筆するには、ある程度の経験値が必要ですが、製造業系のコンテンツを執筆できるライターはかなり少ないです。

当初はテーマ(キーワード)をライターに伝えて執筆依頼していましたが、内容が薄くなるケースが多く、途中から技術者へのヒアリングをしてもらいながら執筆する方向に変更しました。
ただ、それでも問題になるのが技術者の口下手な部分で、専門用語満載で説明するので、ライターが理解できず、都度用語説明などをしていたら、かなり工数がかかってしまいました。
教訓としては、外部ライターを依頼するなら、せめて製造業の経験者を探して依頼することがおススメです。(製造業経験者のライターの母数が少ないので、探すのが大変ですが…)
マーケティング担当が技術者にヒアリングして執筆する
最終的に行き着いたのが、この方法です。
前述の通り、私は異業種からの転職だったので、はじめは知識が少なかったですが、製造部門の技術者のコンテンツの添削や、外部ライターへの指示などをしていくうちに徐々に業界知識が付いてきたので、自身で執筆する方向へ徐々にシフトして行きました。
自ら戦略を立て、ヒアリングしながら執筆する方法は工数こそかかりますが、添削の手間を大きく減らせるため、結果的には最も効率的でした。

独りマーケティング担当の限界
結果的に自分でヒアリングしてコンテンツを作るのが早いといっても、限界は来てしまいます。
記事コンテンツの執筆だけが仕事ならまだ大丈夫ですが、年間数百件の新規問い合わせの対応、動画コンテンツの制作、各種Webサイト/SNSの更新、展示会などのイベントの企画運営などなど、他の業務との兼ね合いを考えると、独りでやるには限界があります。
当社の場合は、私が入社して3年目でマーケティング人材の増員を行ったので、徐々にすべてをカバーして回せるようになりましたが、全部を独りでやるには難しいです。
製造業の中小企業では独りマーケティング担当も珍しくありません。
リソースが足りないのであれば、施策は絞って注力する部分を明確化するのが良いです。
コンテンツマーケティングを進めることで、新規の引合い数が目に見えて増えるのであれば、会社側への増員交渉がしやすいです。すべてを中途半端にして結果が出せないのであれば、まずは一番効果が出やすいものに絞りましょう!
コンテンツ作りは生成AIですべて解決!?
日々進歩する生成AIは、コンテンツ制作のうえで非常に力強い味方です。
私が入社した2020年頃は、まだそこまで普及しておらず、基本的には人間が作るしか選択肢がありませんでしたが、今では文章も画像もAIで生成できてしまいます。
「めちゃくちゃ便利になったなー」と実感している一方で使い方には注意が必要な部分もあります。
コンテンツ制作に生成AIを使うのは大丈夫?
Webコンテンツに関しては生成AIを使用することは禁止されていません。
ただし、ユーザー(読み手)にとって価値のないコンテンツをAIで大量に生成して投稿するのはNGです。
正確で品質が良く、関連性のあるコンテンツを制作することが優先されます。
つまり、生成AIを使用してもユーザーにとって価値のあるコンテンツになっていれば、コンテンツの評価は高まります。

当社でも積極的に利用しています。
必要な情報の収集から文章のたたき台まで。最近では画像生成の精度も高くなってきているので、部分的に画像生成も活用しています。
うまく活用するにはプロンプト(インプット/指示)が大切です。
生成AIに対して明確に指示することで、思い通りの生成ができるようになるため、ある程度の熟練度は必要です。(なんか部下に対する指示と似ていて、曖昧なインプットをすると、欲しいものと違うアウトプットが出てくるので、生成AIに上司としての資質を試されているような気分です…)
生成AIを使うリスク
とても便利な生成AIですが、リスクもありますので、それを踏まえて使用する必要があります。
【ハルシネーション】
生成AIが事実と異なる情報や文脈に合わない内容を、もっともらしく生成する現象のこと。
生成AIはものすごいスピードで、流暢な回答をします。まさしく敏腕セールスみたいで思わずすべて信じてしまいそうですが、嘘が混ざっていることがあります。
この嘘は人間がチェックしなければならないので、全く知識のない技術のコンテンツをAIで生成する際には、製造現場の技術者などにもチェックしてもらう必要があります。
【独自性の担保】
たとえば「金型に関するコンテンツ3,000文字で作って」と、生成AIに入力すれば、ある程度のコンテンツは作れますが、そこにあなたの会社独自の情報は入っていません。
圧倒的な文章量で、生成AIが文章を出力してくれるので、安心してしまいがちですが、SEOを考慮するなら独自性(経験)を入れることが一つ重要です。
具体的には実体験やインタビュー内容、独自調査のデータ、事例など。
生成AIの生成文章に自分で文章を追加するか、あらかじめ生成AIに独自性のある情報をインプットして文章に盛り込んでもらうと良いです。
このように生成AIはマーケティングにおいて非常に強力なツールですが、使い方に注意が必要です。
このコンテンツに関しては、私の体験をベースにした文章のため、生成AIはほぼ使えず、5,000文字ほどの文章を自分で執筆して、最後に生成AIで添削してもらっています。
結構大変です…
まとめ
製造業におけるコンテンツマーケティングは、BtoB特有の課題が多く困難を極めます。
【課題1】ニッチな業界ゆえの検索ボリュームの少なさ
効果を出すには、最低基準の検索数を定めつつ、競合を避けて周辺キーワードから攻める戦略的アプローチが求められます。
【課題2】情報の出し方
技術者から機密保持を理由に拒否されるケースや、受託加工ゆえの事例公開の難しさがありますが、マーケターには公開可能な範囲を見極め、顧客に響く形に変換する交渉力と編集力が求められます。
【課題3】専門性と執筆力の両立
技術者は文章が難解になりやすく、外部ライターは知識不足に陥りがちです。最も効率的なのは、マーケ担当者が直接ヒアリングして執筆することですが、一人での運用には限界があるため、リソースの絞り込みや増員も検討すべきです。
現在は生成AIの活用も有効ですが、あくまでユーザーにとって価値ある「正確で高品質なコンテンツ」を目指すことが評価の鍵となります。戦略、交渉、執筆体制の構築をセットで進めることが成功への近道です。
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その他の製造業マーケのリアルシリーズは下記よりご覧いただけます。
> 「マーケティング部門はいる?いらない?」~製造業マーケのリアル vol.1~
> 「製造業マーケティングの最初の壁」~製造業マーケのリアルvol.2~
>「マーケティング施策の外注委託は正解か?」~製造業マーケのリアルvol.3~
>「孤立するマーケティング担当を救え!」~製造業マーケのリアルvol.4~
